秋田中央道は私が秋田市長時代に都市計画決定した事業である。建設反対の声も出ていたが、秋田市中心部のアクセス強化にはなくてはならない路線であると今も信じている。ただし、住民の皆さんの安全は確保しなければならないし、不安の解消のためには徹底した調査と情報の公開が不可欠であると思う。
だが、地盤沈下の事実を公表するまで3年を要するなど、県はむしろ被害を隠してきたのではないかという疑いを拭いきれない。正直に申し上げると、事業決定にかかわった人間のひとりとして、被害の発生に忸怩たる思いを抱えながら開催した集会であった。
聞き取りに先立って行った講演の講師としてお招きした津村さんは、秋田市内の環境調査会社に勤務されている。以前は、首都圏の地下鉄工事などで生じる被害の補償をお仕事とされていたプロフェッショナルである。おそらく、秋田県民112万人の中で、津村さん以上に地盤沈下の実態を知る方はいないだろう。
津村さんはこの秋田中央道路の工事で生じた地盤沈下を事業着手前から予測したばかりでなく、プロとして具体的に被害額を弾き出し、県側に対応策を示していたという。ところが、それは結局生かされることはなかった。せっかくの忠告は、聞く耳をもたない県によって握り潰され、秋田市長であった私も知らず終いだったのである。
最近になって私は津村さんが発した警告の存在を知り、反省の念からお話をうかがった。なお、津村さんは事業そのものに賛成も反対もしていない。その立場はあくまで中立である。今まで公的な場所で発言してこなかったのも、政治的に利用されることを嫌ったためだという。しかし、実際に予測した通りに被害が出ていることを憂慮され、問題解決の糸口になればという思いから、私の会で地盤沈下についてお話ししてくれることを快諾してくださった。ありがたいことである。
津村さんの説明によれば、被害は調査によってほぼ確実に原因を究明できるそうである。ただ、その被害の原因となっている地盤沈下そのものはいつまで続くか分からない。県では被害補償を業者と共に負担するとしているが、これはなかなか終わりの見えない仕事となるかもしれない。したがって、調査を業者任せにすることは現実的ではない。中立の立場で調べる機関を設置し、県庁内に窓口を設けるべき、という意見はもっともであると思った。
また、予測される被害の中でもっとも怖いのは、ライフライン(ガス・水道・電気)の損傷であるとのことであった。幸い、現状ではガス管の破裂や爆発などは考え難いようだが、地下室などに有害ガスが溜まる可能性は否定できないらしい。場合によっては人の命を奪う事故にもつながりかねないだけに、注意を喚起しなければならない。
津村さんのお話しから分かったのは、この地盤沈下は一時的な問題ではないということである。つまり、住民の安全確保を第一に、長期的な視点からこの問題に本腰を入れて取り組む必要がある。当然のことながら、今後もこの聞き取りを定期的に開催しなければならないと痛感した次第である。
講演後に行った質疑応答では、参加された住民の方々からさまざまな意見が出された。その中でも特に不安が強いと思われたのは、被害が出た際の対応の仕方であった。質問された住民の方は被害を自ら証明する必要があるのではないかと心配していたようだが、津村さんから「それは工事を行った側の責任」という回答を得て、いくらか安堵されたようであった。
なお、この秋田中央道路の工事で発生した被害の相談は、随時受け付けている。周辺にお住まいの方で家屋などに異常が見られたときは、是非とも国民新党秋田県支部に情報をお寄せいただきたい。場合によっては現地を視察して被害状況を確認し、県側に善処を申し入れたいと思う。
※詳しくは国民新党秋田県支部(TEL018-883-0878/月〜金曜日:午前10時〜午後5時)まで。